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2014年3月17日 (月)

書籍紹介、「安楽死を選ぶ」-オランダ・「よき死」の探検者たち、シャボットあかね著

会報「希望」投稿。

「希望」会員 田中七四郎

2014/3/13

 昨年当会報6月号より新聞記事、「高齢者の生と終末」ーオランダからの報告シリーズを数回に分けて紹介しました。

 今回は書籍「安楽死を選ぶ」を紹介します。オランダでは2002年安楽死法を施行。日本は安楽死は法律では認められていない。尊厳死法について検討中といわれている。尊厳死と安楽死の違いは尊厳死は自発的な安楽死といわれている。なぜオランダは世界にさきがけて安楽死を選んだのか?特に1960年代以降の変化が著しいという。新たに発見された天然ガス収入により福祉国家化が可能となり、非物質的要素の追求が重視されるようになった。伝統を破って自由な社会を求める欲求が強くなり、女性解放運動、中絶の合法化、セックスの脱タブー視化などが盛んになった。死について語ることや安楽死論議が活発になった。話し合える雰囲気が醸成され家族、愛する人などと思い切り語りつくして「周囲との対話をともなう死」を語ることが緩和ケアの機能を果たすようになったという。現在オランダでは安楽死は緩和ケアの一環として位置づけられている。安楽死を自発的生命の終結と呼んでいる。医師による意図的な、あるいは自己決定(自己責任)による生命の集結をオープンに扱おうとしている。しかしオランダの人々はいまの現実を決して満足しているわけではない。アメリカなどはオランダは人殺しの国であるという人もいる。同国の安楽死についての悩みは深い。安楽死は簡単にしてはいけない、患者家族医師がジレンマと格闘し選ぶものであると考えている。まず緩和ケアの充実を最優先したいと考えている。一方では安楽死絶対反対というオランダ医師連盟、オランダ患者協会などの組織がある。そこではより疼痛緩和や精神的ケアを含む終末期の緩和ケアを充実せよと訴えている。

 WHO(世界保健機関)による緩和ケアとは、「生命を脅かす疾患による問題に直面する患者とその家族に対して、痛みやそのほかの身体的、心理的、社会的な問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確な評価と処置を行うことことによって、苦痛を予防したり和らげたりし、QOL(人生の質、生活の質)を改善する行為。死期を早めたり引き伸ばしたりするものではない」という。しかし今日オランダでは死期を早める安楽死は、一般的に緩和ケアの一環とみなされるようになっている。もう一つオランダの定義では、緩和ケアにおいて、患者を「平等に責任をもつパートナー」として位置づけている。また医療的な問題と関係のない自死には医師がかかわるべきではない、というオランダ自発的生命の終結協会の考え方がある。また同国では、自殺は違法ではないが、自殺を幇助することは違法である。このようにオランダではいろいろな矛盾点を抱えながら安楽死問題を考えている。本著者はオランダの長い歴史、民族、宗教、風土と深い関連があるという。要するにポルダ(干拓地)ーモデル、オランダモデルがあるという。伝統的に市民社会の原則が国家に優先してきたという。

 翻って日本の場合を考えてみると、筆者は島国という地政学的位置づけからオランダのように血で血を争う長い戦争の歴史よりも、自然災害、天災によっていつ死が突然訪れるか分からなかった、いわゆる日ごろから無常を感じてきた歴史の方が大きかった。よって死について安楽死や尊厳死などについては関心が薄いテーマではないか。日本人は死について積極的に議論することを日常から遠ざけているように見える。若者や成人の自殺者がいま年間3万人前後もいるという。自分(人間)のいのちは自分のものなのだろうか、自死は権利といえるものだろうか、死に対する自己決定といっても本当にどこまで信用できるものだろうか、安楽死、尊厳死ということばの定義の問題ではない。日ごろから死、死に方(死生観)について考え議論する雰囲気、場がもっと必要ではないか。死を身近に考えることによって神を畏れ自らの生き方を見直すよすがになるのではないだろうか、筆者は考えさせられた。

 さいごに本書の著者は1947年東京生。父アメリカ人、母日本人。国籍、アメリカとオランダ。1974年からオランダ在住。現在は通訳、コーディネート、執筆業が生業という。

参考文献:「安楽死を選ぶ」-オランダ・「よき死」の探検者たち、シャボットあかね著、

日本評論社、2014/1/15\1,900

  新旧の風車に広がる花畑  烏有

以上。

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