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2012年7月 8日 (日)

「自衛する老後」書籍紹介、「希望」投稿。

書籍紹介「自衛する老後」ー崩壊は防げるか、河内孝著、新潮新書4702012/5/20発行、\720

 在宅医療、介護保険制度の現状と問題点              「希望」会員 田中七四郎

  ーがんで逝く終の棲み処やねんころり                      2012/7/8

 

 いま福岡県では在宅での療養生活を支える仕組みとして、地域包括支援センター、在宅医療支援センター、訪問介護ステーションなどが設置されている。北九州市においても地域在宅医療支援センター(実際は地域包括支援センター配下になっている)などで組織的な仕組みが整えられつつある。小倉北区の例では、小倉医師会館(中島町)、生涯学習総合センター(西小倉)、清水市民センター、足原市民センター、などで患者や家族からの連絡に36524時間体制で在宅医療の相談や支援に乗ってくれることになっている。一般の診療所とは料金やシステム(使い勝手)が異なっているので、各県の市町村にある介護保険課、地域包括支援センターに前もって問い合わせして調査して使う必要がある。
 介護保険制度については標記本によれば法が成立以来、下記のような紆余曲折をたどっている。

1997(H9)

12

介護保険法成立

1

2000(H12)

4

介護保険法施行

2

2003(H15)

4

介護報酬を▲2.3%引き下げ

2005(H17)

6

介護保険法改正。費用の増大を受け「予防重視」「地域密着型サービス」への転換を打ち出す。同年10月、改正法施行。

3

2006(H18)

4

改正法の施行を受け、介護保険報酬を▲0.5%引き下げ。

2008(H20)

5

コムスン事件(介護報酬の不正請求)を受け、介護保険法及び老人福祉法を一部改正。

4

2009(H21)

4

介護保険報酬を△3.0%引き上げ。介護従事者の処遇改善をはかる。

2009(H21)

5

改正法の全面施行

5

2012(H24)

4

介護保険報酬を△1.2%引き上げ「24時間地域巡回型サービス」の開始。

介護保険制度の改正経過「自衛する老後」P61)

 介護保険の対象となるのは、①65歳以上の人、②4064歳までの人で、医師が「末期がん」と診断した場合で、介護度(要支援1,2、要介護15)に応じて介護サービス(居宅へ訪問してもらうサービス、自宅から通う通所サービス、福祉施設・有料老人ホームなどへ宿泊(入所)して受けるサービスなど)を総費用の1割の自己負担で受けることができる。介護保険を利用・申請する前に現在の最新情報を市内各区の担当窓口(介護保険課など)で確認しておくことが重要である。

 いま在宅での緩和ケア(在宅ホスピス)については、在宅でも十分な緩和ケアが受けることができるとうたわれているが、実情は自宅で安心・安全な療養ができるという環境には程遠い。自宅で痛み止めや脱水症状時の点滴や高栄養の点滴薬を患者の症状にあわせて細かく調合することができる資格を持った特定看護師(特定の医療行為を医師の支持を受けて「診療の補助」として実施する新しい看護師像)や、近所の薬局で無菌状態で調剤ができる設備の整備はこれからの課題である。

 介護保険制度は、1997年(H9)に始まった。介護に要する費用はすべて税金でまかなうのではなく、社会全体でみんなで負担しよう、という考えから生まれた。国、自治体が保険管理者となり、40歳以上の国民を被保険者として保険料を徴収し、事業を運営することになった。

つまり税金による「措置制度」から、介護サービスの提供者と契約者という「利用契約」に変わった。被保険者は要介護度に応じて訪問介護、デイサービス、施設入居などののメニュから、自分に合うものを1割負担で選択できる。つまり65歳以上の高齢者は、いつでもどこでも必要なサービスが1割負担で受けられる、というのが厚労省の言い分であった。また、特養(特別養護老人ホーム)や有料老人ホームなど介護施設整備事業には国・自治体の建設費用負担がかかりすぎるので施設介護から在宅介護への誘導を図る狙いもあった。しかし在宅介護は、施設整備費用以上にコスト高になることが分かってきた。給付費の激増に驚いた厚労省は二度(2003,2006年)もヘルパーの介護報酬を切り下げた。介護報酬切り下げのしわ寄せは人件費に跳ね返り、多くの有望な男性介護職が辞めていった。残ったのは人手不足と介護の質の低下であった。介護大手コムスンが引き起こした不正請求事件はその頃のことであった。問題が続出したため、厚労省は2009年度の3次改正で初めて介護報酬を3%引き上げた。2012年度からの介護報酬は1.2%のプラス改定であるが実質的には0.8%のマイナス改定になるといわれている。現在介護サービスの受給者数は10年前の発足時の149万人から403万人と2.7倍に増加している内訳は、厚労省の在宅誘導もあって自宅介護サービスを受けている人が73%と圧倒的に多く、施設に入っている人は21%(残りは地域密着型サービスなどの利用者)である。年間8.3兆円(2011年度)の介護保険財政は、利用者が1割負担、残りは保険料と税金で折半している。月額2,911円で始まった1号保険料(65歳以上)は、3年毎の改定の度に上がって2009年度は4,160円(全国平均)となった。今回2012年度の改定では5,000円の大台を突破することになる(同、P68)。夫婦二人で月額1万円、これに健康保険料が加わり年金生活者の負担増は相当なものになる。いま介護保険は、支給対象が65歳以上で、このうち介護認定をとり、実際にサービスを受けている人は13.8%2010年)、つまり10人中8人は掛け捨て状態となっており制度を利用していない被保険者の不公平感は否めない。膨張を続ける介護保険費用は、大幅な給付の削減か、消費税増税か、並行して本人負担額を増やしていく以外、答えが出ない。遅かれ早かれ国は、国民が負担の増大を受け入れるのか、介護サービスを切り下げ、低福祉をを覚悟するのか、という選択を迫ってくるだろう。国民はいま声をあげ、介護保険制度が維持できる対案を要求しなくてはならない。

 介護保険会計の中で肥大化を続ける介護認定経費、行政事務費について厳しくチェックする必要がある。また医師の意見書の作成、認定審査会出席にも高額の報酬が支払われている。その内訳は公開されていない。情報の開示を求めていく必要がある。

 読了後今日の在宅医療、介護サービスの経過、実態が垣間見えてきた。課題は山積しており後期高齢者予備軍の一人として身につまされる。人生の最期は在宅か施設かという二者択一論ではなく、「被介護者のQOL(生活の質),QOD(死の質、患者の尊厳を尊重する終末医療で使われることば)を維持するためにはいま何が必要か」という観点に立って、被介護者とその家族、在宅主治医などが安全・安心して選べる在宅の幅が広くなることを期待したい。この際の在宅とは自宅のみを意味するものではなく、住宅街に高齢者・被介護者が気楽に利用できるサテライト的なコレクティブハウス(小規模多機能型居宅介護施設)などもバーチャルな在宅として位置づけて良い。高齢者・被介護者が高齢度・介護度に応じて在宅と該介護施設などを自由に行き来できるような環境整備を国へ望みたい。

 がんで逝く終の棲み処やねんころり 烏有

以上。

参考文献:・「超高齢社会」、高橋元監修、中央経済社2012610日発行、\2,800

     ・web情報(YOMIURI ONLINE)より。

http://www.yomiuri.co.jp/job/biz/qaetc/20120703-OYT8T00734.htm?from=navlk)

 「野田政権が取り組む社会保障・税一体改革は、少子高齢化で揺らぐ社会保障制度の立て直しを目的としています。「だとすれば、保険料の上昇も少しは抑えられるのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、実際は介護サービスの充実など様々な「社会保障の機能強化」策が実施される結果、一体改革関連法案が成立すると、保険料はむしろ高くなります(読売新聞編集委員 石崎浩、201273日)。」

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コメント

国民の負担増か低福祉かの選択のところに目が留まりました。

福祉国家と呼ばれ、日本が模倣したスウェーデンも経済の停滞により、福祉が維持できなくなっているという事態。
日本はどのように進んでいくのか。偉い人任せではなく国民一人一人が意見を出すことから始まるのかなと感じます。

投稿: 岡本大輔 | 2012年10月27日 (土) 05時56分

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