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2007年2月19日 (月)

【思い出の部屋の中から:心に残る患者様とのふれあい体験②】

【思い出の部屋の中から:心に残る患者様とのふれあい体験②】

                      大山 恵子

皆様、こんにちは。今回も、私の思い出の部屋の中に入ってみようかと思います。今日ご紹介するのは、Bさんです。病名は、急性の白血病でした。年齢は27歳くらいでした。結婚されたばかりの新婚ほやほやの方でした。とても、綺麗な方で色白で旦那様もかっこよくて似合いのカップルさんでした。

Bさんは性格も穏やかでいつもニコニコされている方でした。抗がん剤の化学療法がはじまると何本もの点滴をつなぎかえる私に「たいへんですね。時間通りにボトルがくるなんて、腕時計で一滴一滴計算している看護婦さんの几帳面な性格かしら?」、副作用で苦しいはずなのに、「私は大丈夫よ。ベッドに寝ているだけだもの」とおっしゃっていました。病名のことは、当時はどうしても頭髪が抜けるなどの副作用が顕著に現れるために、隠しきれないため、本人にも告知はされてあったかと思います。

頭髪が抜け始め、顔が満月のように膨らみ始め、次第に車椅子生活になっていったBさん。ご主人がいらした時にもにっこりと微笑むのがやっとというくらいに体力が落ちていきました。自分達の力ではどうすることもできなくて、病魔の進行の速さを恨みました。

ある日、Bさんから『お願いがある』と相談を受けました。「新しくできたお店で主人と二人で食事をしてみたい。」そんな事のできる体力が残っているとは思われませんでしたが、本人とご主人と両親と主治医と看護師らスタッフみんなで話し合い、なんとか実現させようと決心いたしました。

春の頃でしたがまだ肌寒い日に、計画は実行されることが決まりました。Bさんはとてもうれしそうでした。予定日が決まってからは元気も出てきたようにみえました。車椅子でのお散歩も練習だからと積極的に行うようになっていました。Bさんの気力のすべてを、このお食事会にかけていらしたように思われました。

私は前日Bさんの担当になったので、いつものように身体を拭くだけでなく医師とご家族の許可をもらってBさんの希望するシャワーを浴びていただきました。車椅子ごと浴室に二人で入り、髪や身体を丁寧にシャボンを使って洗いました。「明日、デートだからね。やっぱり綺麗になりたいものね」ってBさんはうれしそうに話してくれました。幸いに風邪をひくこともなく入浴は終わりました。笑顔で話しながら時計を気にしては身体を洗い、冷えるんじゃないかと心配して私の方は実は汗びっしょりでした。

翌日、ご主人はスリーピースを着こなして颯爽とお迎えに来られました。Bさんには、お母様が日本人形のようなかわいいヘアスタイルの鬘と新調したお洋服を用意してくれていて、すごくかわいらしい仕上がりになりました。ご主人もまぶしそうに彼女を見ていらしたように思います。でも、病院を出るときは、風邪をひいたらいけないので、帽子にマスクにマフラーにひざ掛けと車椅子に座った彼女の周りを固めてしまったので「なんだか怪しい人みたい」と鏡をみて彼女が笑ってしまったのを覚えています。

フランス料理のフルコースを予約していましたが、結局、体力がなくて、最初にコーヒーを持ってきてもらい、少し口をつけただけで帰ってくることになりました。「それでも、彼女は満足してくれていましたよ。」とご主人から聞きました。帰ってきたら早速、ベッドにもどり点滴でした。Bさんはきつそうでしたが、スタッフみんなに「楽しくデートできました。みなさんのおかげです。ありがとうございました。」とお礼を言ってくれました。

Bさんはみんなの祈りもむなしく、天国に召されていきました。

私は、Bさんの最期のケアを担当させていただきました。お母様が用意された振袖を着せて鬘をつけたBさんは、本当に日本人形のように綺麗で、綺麗すぎて悲しかったのを覚えています。

 今日はこの辺で、失礼いたします。

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