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2005年9月24日 (土)

特集(自死遺族のグリーフケア)

シンポジウム「自死遺族のグリーフケアと自殺防止~コミュニティーはタブーを乗り越え悲しみをシェアできるのか」参加報告

日時:平成17910日 14001730

場所:北九州市総合保健福祉センター「アシスト21

司会進行:北部九州ホスピスケアの会 医師 矢津 剛

共催:北九州市(北九州市精神保健福祉センター)

   NPO法人北部九州ホスピスケアの会、北九州がんを語る会

 まず基調講演では、あしなが育英会、NPOライフリンク副代表の西田正弘さんのお

話があった。西田さんは、親を自死(自殺)で亡くした体験をもつ高校生や大学生と5

年間かかわって考えたことを中心にその実情と課題を語られた。西田さんは12歳の時

に父を交通事故で亡くし、その突然さに心が混乱し、ダメージも受けた。しかし交通

事故死というのは、いわば社会に認められているといえる。社会が交通事故予防対策

や飲酒運転の罰則規定の強化などに取り組み、徐々に改善が図られている状況と比べ

ると、自死した親の実態調査などは、進んでいない現状にある。全国的に自死が年3

万人を超え、特に4050代の自死が急速に増えている。それに伴ない、自死遺族の問

題も深刻化しているのではないだろうか。あしなが育英会では、例年親を亡くした子

どもが集い、34日のキャンプを行なうが、親を自死で亡くした子は、どうしても

その場で、皆にそれを打ち明けられない場合が多いということがわかってきた。親が

自殺したと言った瞬間に、友人関係がずれていく、あるいは変な家庭と思われるので

はないかという不安をもつ。あるいは身内から初めに口止めされたことでストレスを

抱えている場合もある。そこで彼らの話をもっとよく聞こうという試みが始まり、そ

れがVTRで紹介された。VTRでは、中学生の時に父が自死した青年の苦しみが、青

年自らの口を通して語られていた。寝室で命を絶っていた父の第一発見者となったこ

わさやそれ以後の生活のなかで、父の自殺を誰にも知られたくないという強い思いや

母が体調をくずしたのは父のせいだという父へのうらみ、また父の自殺は食い止めら

れたのではないか、食い止められなかった自分が悪いという自分への責めなど、さま

ざまな思いが彼を苦しめていた。それが自死した親の子どもだけのキャンプで、初め

てそういう自分の体験を語ったという。西田さんのお話では、グリーフというのは、

病気ではなく、大事な人を失えば、いろいろな感情が湧いてくるのは自然なこととま

ず受け止められることが重要であるという。さまざまな感情を人に受け止めてもらわ

ないと、その人の生活に多大な影響を及ぼしてくることになる。そこで今回の問いか

けであるそのグリーフを、「コミュニティは、分かち合えるのか」ということを、考え

てみる。分かち合うには、まず「自殺する人は弱い」などという社会の偏見を改めて、

一人一人が、関心をもつことから始めるべきではないのか。また自殺は単に個人の問

題ではなく、社会の問題として考えていくことが必要なのではないのか。当事者の話

を聞けば聞くほど見えてくるものがある。当事者同士が身近な場所で、分かち合いが

できるように、われわれはむしろ間接的にサポートしていくことが必要であると考え

ている。

 

 その後、自死遺族の方のお話があったが、匿名希望の方であったため、要約は省略

させていただいた。次にNP0北九州ホームレス支援機構に所属し、牧師、音楽療法士

でもある谷本仰さんのバイオリン演奏とフリートークが行なわれた。ホームレス支援

の弁当が30個から150個必要となり、次の年に250個と、年に100も増加した年は

1997年から1998年であり、この年は、年間自殺者が28000人から31000人に増加し

た年と重なっている。また自殺率は、全国的に見ると4000分の1の人が自殺している

ことになるが、北九州のホームレス者を100%としてみると、そのうち200分の1の

ホームレス者が自殺していることになり、高い自殺率となっている。したがってやは

り自殺は、一見個人的なもののように見えるが、まさに社会の問題であると捉えるこ

とができるという。このお話しの後、谷本さんが体験された身近な人の死と、残され

た谷本さん自身の苦しみについて語られ、確かに後に残された者の複雑な思いは存在

すると話される。谷本さんのバイオリン演奏で、ひととき心が休まる。

パネルディスカッション

 後半は、基調講演の西田さん、自死遺族支援「リメンバー」福岡代表の井上久美子

さん、小倉記念病院精神科医師・臨床心理士の三木浩司さんによるパネルディスカッ

ションが、矢津剛さんの進行により行なわれた。井上さんの自死遺族支援「リメンバ

ー」の活動報告や西田さんのライフリンクについての説明、三木医師によるうつ病患

者の自殺の問題などが取り上げられた。自死遺族支援は、身近な所で支援の輪を広げ

る必要があると思われるため、北九州でも、精神保健センターなどの協力を得て、会

を立ち上げる方向をめざせないだろうかという案が出された後、閉会となった。

所感

 重い課題ではあったが、現代社会に生きる我々にとって、自死あるいは自死遺族の

問題は、他人事としてではなく、関心を寄せ、またゆえなき偏見によって自死遺族を

傷つけることのないよう意識していかねばならないとこれを契機に心を新たにした。

 実践報告という形であったため、自死遺族の抱えている問題がリアルに浮き彫りと

なり、充実したシンポジウムであったと思う。関係者の方々お疲れ様でした。(文責新木)

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