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2005年7月16日 (土)

春夏秋冬(電話相談の中から-2-)

春 夏 秋 冬

―― 電話相談の中から(2) ――

 3ヶ月前にお電話した者でございますが、その後、なんのご連絡もしていませんので、今日はご報告をと思いまして電話をしています。私は会員でもございません。あの時も、自分の名前も住所も申し上げませんでした。しかし「がんを語る会」のことを新聞で読みました時、すぐメモをしていましたので、どうにもならなくなってお電話した次第です。実は毎日、北九州の病院に通って、主人の介護をすることに、クタクタになっていたのですが、ひとつは、主人は自分の病気と現状を知らないのに私は知っていて、それを隠しておかねばならないことと、私の母と妹が主人の病気を私のせいにして毎日のように電話で責めたてますので、どうにもならなくなって、睡眠薬を飲まなければ眠られなくなっていたのです。血圧もあがっていました。このままでは私が倒れる。私が倒れたら主人の介護はどうなるのかと、疲れきって混乱したままお電話したのです。

 あの時、長い電話を最後まで聞いてくださり、そして「距離をおいてごらん」と言って下さったでしょう。直接、主人の介護には関わらない母と妹に対して距離をおくことと、主人のことを一人で背負いこまないで、息子と娘に本当のことを言って、4人で分担して介護できるように話し合ってごらんなさい。と勧めてくださいました。私は2人の息子と娘に来てもらって、貴方様がおっしゃったことをそのままお話しました。そうしますと子供たちが、「よし、そうしよう、俺達の父親だから、俺達で精一杯やっていこう」と言ってくれたのです。それから、母と妹に混乱させられない距離をおくことにして、交替で介護することになりました。本当のことを知ってから、子供たちと気持ちが通じあい信頼しあって、私は睡眠薬を飲まなくなったのです。

 ご報告しなければならない大切なことなのですが、昨年12月、主治医の先生から「がんが脳に転移している」と告げられました。それで子供達と話し合って、主人を1日でも2日でも家に連れて帰れないだろうかと相談しましたら「いいでしょう」と言ってくださいました。「家でお正月をしようよ」と言うと主人も喜んでくれました。その日、長男が主人を毛布にくるんで抱いて、弟が待っているワゴン車に乗せ、私は主人の横に掛けました。外の部屋は散らかったままでしたが、主人の部屋だけはきれいに整理していたのです。久しぶりに我が家に帰った主人は「やっぱり家はいいなあ」と心から嬉しそうでした。

 元日の朝、子供たちが襖を開いて「お父さん、明けましておめでとうございます」と挨拶しますと、主人はとても喜んでくれまして・・・。正月がすんで病院に帰っていきました。2、3日後、主人が娘に「お母さんには、いろいろ世話になった」と言ったそうです。娘は「お父さんは、もう知っているような気がする」と言うのですが、私は主人に「3月か4月には帰れるからね」といつも言っているのです。もしかしたら、主人は感づいているのかもしれません。知っていて、知らないふりをするのはつらいです。しかし最後まで言わないことにしています。

 つい最近、子供達と4人で葬儀のことを話し合いましたが、子供達は

「形式だけの葬儀ではなくて、父のことを本当に知っていて下さる人達だけに来ていただいて、亡き父を偲ぶ会にしよう」ということになりました。主人には「3月か4月には帰れるから」などと言っておきながら、主人の知らないところで、こんな相談をしなければならないのは悲しいです。夫婦というのは悲しいですね。一人になってからのことを時々考えます。私には、したいと思うこともありますし、いくつかの趣味もございますから、そちらの方に打ち込みたいと思うこともあります。あの時混乱しきっていた私に「距離をおいてごらん」と助言してくださったこと、ほんとうにありがとうございました。あのままでしたら、私が駄目になって、収拾つかなくなるところでした。名前も住所も言えないような者でございますが、一人になって、悲しくてたまらない時は、またお電話するかもしれません。勝手なお願いですが、どうかその時はまた話を聞いてください。

追伸、この女性との電話による対話は、来月号で終わります。

2005年6月7日  浜口 至

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