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2005年6月16日 (木)

春夏秋冬(神様のプレゼント-2-)

春 夏 秋 冬

―― 神様のプレゼント (2)――

 5月9日(月)の朝食には、食パン1/2、トマトジュース、ヨーグルト、養命酒の小カップ1/4をおいしく食して、8時14分発の西鉄バスで北九州の某総合病院泌尿器科へ向かう。バス路線の左右は、まさに(目に青葉、山ホトトギス、初鰹)である。いろんな問題を背負って疲れている、私の心が癒され、自然の息吹を腹いっぱい吸い込んで涙がこぼれそうになる。某総合病院下のバス停で降りる。1階の受付で予約券と診察券を提出し、エスカレーターで2階へ、右側の突きあたりが泌尿器科外来である。受付で診察の手続きを終え、廊下の椅子にもたれて順番を待つ。

 名前を呼ばれて診察室に入り、テーブルを挟んで主治医と向かい合う。主治医も笑顔、私も笑顔で挨拶。主治医がカルテを出して指でなぞるようにして「浜口さん、カソデックスを4週間中止したでしょう」と確認する。

私は「はい、おっしゃる通りにしました」「それでは、下腹部に注射しますので、済んだらこの資料を持って採血室へ行き、採血が済んだらすぐここに帰ってきてください」「はいわかりました」。私は渡された資料を手にして採血室へと向かう。少し歩くと左側に(第2西病棟)の標示板が目につく。

私はかって、西病棟の2人室に検査入院をしたことがある。入ってみると(癌病棟)であった。同室の患者さんに夫人が付き添っておられた。患者さんの顔は黄色に染まっていた。食事前、私は目を閉じ無言で感謝の祈りを捧げる。

 日曜日には、患者さんの家族が面会にこられる。孫にあたる男の小学生が、おじいちゃんの患者さんと、付き添いのおばあちゃんから、なにかを聞いていたが、私のベッドに来て、「おじさん、ぼくに国語を教えてください」と言った。「いいですよ、いっしょに勉強しよう」と答えると、少年は喜んで、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、おかあさんに、さっそく報告していた。「私は食事がすんだら、面会室でテレビを観るから、おじいちゃん、おばあちゃんと仲良くしなさいよ」といって、家族がくるたびに部屋をゆずっていた。おじいちゃんの病状が急変し、私は隣室へ移された。医療者達が廊下を小走りに急ぐ足音がして、おじいちゃんは亡くなった。私が移された2人室に、がん再発の男性と家族が入ってきた。3人の娘は看護婦で良い交わりが出来ていたが、この患者さんも病状が急変し、私はまた隣室へ移され、患者さんは亡くなった。

 採血室へ向かいながら、これらのことが脳裡をよぎった。採血がすんで泌尿器科外来にいくと、主治医が私を呼んで「浜口さん、採血の検査がすむまで、45分くらいかかりますが、その間待っていただく時間はありますか」「今日は時間がありますので、食堂でお茶でも飲んで、10時15分には、ここに帰るようにしましょう」といって、食堂で肉うどんをゆっくり食べた。朝食はすませているのにこれは多すぎるなあと思ったが、時計を見ると1010分になっていたので、廊下を歩いて泌尿器科外来についた。すぐ私の名前が呼ばれて検査結果の説明を聞いた。服用するのは、

カソデックスではなくて、エストライト(カプセル)を1個、朝食後と夕食後に服用することになるが、主治医の話によれば、この薬を飲むと、食欲がなくなり、胸がむかついたり、吐き気がきたりするが、これは薬のせいですから、どうにもならなくなったら、朝食後は飲まないとか、夕食後は飲まない、というようになさってもかまいません。しかし、2週間に1回来ていただくことは出来ませんかと主治医が言った。私は、はなはだ勝手なお願いですが教会の牧師をしていますので、日程はギッシリつまっていますと答えた。

 主治医は「よくわかりました。それでは28日分、エストライトを出しましょう」と応じてくれた。「もし、私に耐え難い症状が表れたら、手紙でご報告します」といって処方箋を手にして、薬局に向かい、エストライトなるカプセルを28日分貰った。坂道を徒歩でゆっくり歩いて、バス停へ行った。5分待って、行橋行きのバスがきたので中の座席に腰をおろした。バス路線の左右は朝よりも鮮明な緑、杉の花粉、道端の花、花に雑草が息づき、私の疲れは癒されて帰宅した。妻に報告し、夕食後からエストライトのカプセル1ケを服用することになった。確かに強いようだ。患者さんから「浜口さん、抗がん剤はつらいよ」と聞いていたが、私の薬はまだ序の口である。

 私と妻は副作用のことを(癌ちゃん)と呼ぶことにした。(北風小僧の癌太郎)は遊び好きだから、時々やってくるだろう。癌太郎との遊びがどう展開していくのか、まだわからないが、私には先取り不安などはない。体調と相談しながら、与えられている今日を日程通り生きていくことだ。

2005年5月13日  浜口 至

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