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2005年5月12日 (木)

春夏秋冬(あなたはどこへ行くのか)

春 夏 秋 冬

―― あなたはどこへ行くのか ――

 Kさんの夫人から「ホスピスで夫のがんを診てもらいたいので、紹介してくださいませんか」という電話があり「よかったら同行してください」と依頼されました。さっそくホスピス病棟の担当医に電話して、都合のよい日程を決めてもらい、JRとバスを乗りついでホスピスに向かいました。診断は(肺がんで骨転移がある)ということで通院を勧められましたが、北九州の北端から福岡市郊外までの通院は困難であることと、入院になった場合、年老いたお母さん1人を残して、夫人が病室で介護にあたるのも困難ということで、北九州市内の某医科大付属病院に入院されました。夫人は毎朝私に電話をして、ご主人の病室に向かい、帰宅されると必ず、ご主人の症状を報告されました。だれかに本当のことを知ってほしいという思いがあられたようです。お話によれば、ご主人は花を栽培するのが唯一の趣味だったようです。

 私は2週間に1度Kさんの病室を訪問しました。夫人の電話連絡で、Kさんの症状はいくらかわかっていますが、病室を訪問するうちに、Kさんの頭髪が抜け落ちているのが目につきました。「頭が少し涼しくなりましたね」と冗談を言うと、きまり悪げに頭を撫でながら、主治医から1泊退院の許可が出たといって喜んでおられました。それを聞きながら、なにげなく夫人と私の視線が合いました。視線が合っただけで、私は1泊退院の意味を悟りました。Kさんは退院したら畑を耕して、椿の種子を蒔くことに意欲を持っておられましたが、夜、夫人からの電話によると、がんが進行していて「末期」ということでした。

 次に訪問すると、Kさんの体には何本かのチューブがつながれていました。

 数日後、夫人から電話で、Kさんの訃報と葬儀告別式の日時、会場が伝えられたので、告別式に参列しました。

1週間後の初七日にお誘いを受けました。私が出かけたのは、来客が帰られた時間帯でしたから、仏前でゆっくりお話を聞いたのですが、Kさんの最後が近づいたので、夫人が「あなたは、自分の行かれる所がわかっておられますか」と尋ねられると、「うん、うん」と頷かれたので、手を握って(般若心経)を唱えられたそうです。お話を聞き、お茶をいただいて、Kさんの花畑を見せてもらいました。

(あなたは、自分の行き先がわかりますか)

みなさんも、わたしもこの問いかけに答えなければなりませんね。

2005年3月YY日  浜口 至

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